薬液注入工法の特徴は?各工法の手順からメリット・デメリットも解説!

ソリッドキューブ工法協会コラム工法薬液注入工法の特徴は?各工法の手順からメリット・デメリットも解説!

「薬液注入工法」は地盤改良方法の1つです。

施工が簡単に行えたり、機械が小型なので施工場所を選ばなかったりと、メリットの多い工法です。
ですが「薬液注入工法」と一口に言っても、さまざまな施工方法やメリット・デメリットがあります。
そこで、この記事では以下の内容について解説します。

  • 薬液注入工法とは
  • 薬液注入工法の種類
  • 薬液注入工法のメリット
  • 薬液注入工法のデメリット
  • 薬液注入工法の注意点

「薬液注入工法の採用」や「地盤改良工事を検討中」の方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

薬液注入工法とは

薬液注入工法は、地盤強化のために行われる地盤改良工法のうちの1つです。
さまざま工法がありますが、基本的には注入管を用いて、土を固結させる薬液を地盤の中に注入します。

薬液を注入すると、地盤に粘着力が与えられ、その効果で地盤の崩壊や水の侵入を防げます。
施工は比較的簡単でありながら、安全性の確保など、活躍する場面が多い工法です。

薬液注入工法の主な種類は4つ

薬液注入工法には、主に以下の4種類があります。

  • 二重管ストレーナー工法(単相式)
  • 二重管ストレーナー工法(複相式)
  • 二重管ダブルパッカー工法
  • 浸透固化処理工法

それぞれの工法について説明します。

二重管ストレーナー工法(単相式)

二重管ボーリングロッドを注入管として、瞬結型注入剤を使用する工法です。
まず、削孔(穴を掘る)します。そして、掘った穴に瞬結型注入剤を注入して、地盤に粘着性を与えます。

二重管ストレーナー工法のメリットは以下のとおりです。

  • コストを抑えられる
  • 環境にも比較的安全

二重管ストレーナー工法(単相式)の施工手順↓

  1. 削孔…所定深度まで削孔する
  2. 薬液注入…瞬結性薬液を注入する

二重管ストレーナー工法(単相式)は、比較的コストが抑えられるのが魅力です。

しかし、採用率が高くなっているのは、次で紹介する「二重管ストレーナー工法(複相式)」になります。

二重管ストレーナー工法(複相式)

基本的には「単相式」と同じ原理で行う工法です。

”単相”式と”複相”式の違いとしては「瞬結性薬液と浸透性薬液を交互に注入すること」です。

二重管ストレーナー工法のメリットは以下のとおりです。

  • 幅広い土質条件に対応できる
  • コストを抑えられる
  • 環境にも比較的安全

二重管ストレーナー工法(複相式)の施工手順↓

  1. 所定深度まで削孔する
  2. 瞬結性薬液を一次注入する
  3. 中結~緩結性薬液による浸透注入をする

二重管ストレーナー工法(単相式)よりもメリットが多いので、単相式から複相式へと徐々に移行しています。
最も一般的な薬液注入工法です。

二重管ダブルパッカー工法

削孔と注入作業を別工程で行う工法です。
工程を2つに分けることにより、確実な注入を行えます。
二重管ダブルパッカー工法のメリットは以下のとおりです。

  • 土粒子のすき間への浸透性が良い
  • 圧力による影響がほとんどない

二重管ダブルパッカー工法の施工手順↓

  1. ケーシング(鋼管)で削孔する
  2. シール材を充填する
  3. 注入外管を挿入する
  4. ケーシングパイプを引き抜く
  5. 一次注入…CB材を充填し地盤の均一化をする
  6. 二次注入…溶液型注入材で浸透改良をする

二重管ストレーナー工法(複相式)よりも手間が掛かるので、工期やコスト面では劣ります。ですが、高い注入効果を得られるため、重要度の高い工事や構造物直下の工事の場合には採用されることも大きい工法です。

浸透固化処理工法

浸透固化処理工法は二重管ダブルパッカー工法に少し工夫を加えた工法です。
間隙水(かんげきすい。堆積している土粒子間の水)を恒久薬液に置き換えます。
薬液がゲル化することで、地盤に粘着力が付加されて、地盤のせん断強度が増します。

浸透固化処理工法のメリットは以下のとおりです。

  • 既設の構造物の下に使用できる
  • 液状化現象が起きない
  • 薬液の劣化がほとんど生じない

浸透固化処理工法の施工手順↓

  1. 削孔する
  2. 注入外管を挿入する
  3. スリーブパッカーを注入する
  4. 薬液を注入する

浸透固化処理工法はメリットの多い工法です。

薬液注入工法の共通のメリット

薬液注入工法の共通のメリットは以下のとおりです。

  • 小規模なスペースで施工が可能
  • 騒音や振動が少ない
  • 環境への影響が少ない
  • 360度施工が可能

それぞれ解説していきます。

小規模なスペースで施工が可能

薬液注入工法は大きな機械を使いません。
そのため、施工スペースが大きく取れない場所や、上部に電線が流れているような場所でも施工が可能です。

騒音や振動が少ない

杭を打設しての地盤改良工事の場合、どうしても近隣への音の影響が発生します。その点、薬液注入工法は薬液を注入するだけなので、騒音や振動が少ないのです。

住宅地で施工する場合などには大きなメリットになります。

環境への悪影響が少ない

産業廃棄物を処理するときには「温室効果ガス」や「ダイオキシン」が発生してしまいます。これらは自然環境や人体に悪影響を与えます。
ですが、薬液注入工法は産業廃棄物がほとんど出ません。環境への悪影響が少ないことは長い目で見るとかなり大きなメリットです。

360度施工が可能

薬液注入工法は360度、方向を選ばずに施工が可能です。
たとえば、傾斜が急な場所や壁に薬液を注入することもできます。

薬液注入工法のデメリット

薬液注入工法のデメリットは以下のとおりです。

  • 品質にムラが生じる可能性がある

それぞれ解説していきます。

品質にムラが生じる可能性がある

薬液が十分に浸透せずに固化しきらない場合があります。
固化不良が生じることで、掘削時に出水事故や崩壊などが発生する可能性があります。
原因としては、薬液の浸透具合が土質によって異なり施工中に把握することがむずかしいためです。

薬液注入工法の注意点

薬液注入工法には、コストがそれなりに掛かります。
たとえば、一般的なライナープレート立坑築造に伴う費用目安は『400万円〜800万円』ぐらいです。
ここで費用の幅があるのは、土地や掘削深度など、さまざまな要因で変わってくるからです。

正確なコストを算出するためには、業者から見積もりをしっかり取りましょう。
また、費用を下げたい場合には、必要最低限の場所に行うのもよいでしょう。

まとめ

薬液注入工法は地盤強化や補修に適した工法!

この記事では「薬液注入工法」について解説しました。

薬液注入工法のまとめは以下のとおりです。

  • 薬液注入工法とは、地盤改良工法のうちの1つ
  • 施工が比較的簡単で、施工スペースも取らないので採用率は高め
  • 薬液注入工法にはさまざまな施工方法がある
  • 薬液注入工法のメリットは多い
  • 「固結不良」など、デメリットもある

「薬液注入工法」と一口に言っても、施工方法次第では大きく変わってくるものです。
また、現場の状況によって、適した地盤改良工事の方法も変わります。

地盤はその土地の根幹となるものです。地盤調査や地盤改良工事はしっかりと行いましょう。