地盤改良における置換工法と固結工法の違い
今回は地盤の改良方法である「置換工法」と「固結工法」の違いについて解説していきたいと思います。
この記事を通して色々な状態と、それに対応する多種多様な施工方法を把握していく事で、地盤改良についての知識をより深めて頂ければと思います。
地盤改良工事とは?
建築物を建てるにあたって、地面・地盤の状態は最初に考慮すべき重要な点と言っても過言ではありません。傾斜地であったり、弱い地盤に調査・改良をせずに建物を建ててしまうと沈下や倒壊の恐れがあるためです。
建物そのものを支える地盤をより強固にするために行う工事を「地盤改良」と言い、経済的な理由や、計画地の状況や地盤の状態に応じで様々な工法があります。
置換工法
置換工法とは、計画地の軟弱地盤の一部、又は全体を良質材等に置き換えて地盤の強化を行う事で滑動やせん断・沈下・液状化に対して対策を施す工法です。
主な置き換え方法として「掘削置換工法」と「強制置換工法」の二つが挙げられます。
適用範囲
この工法には大量の良質材が必要となるため、あまり大きな建築物のための計画地には向きません。
また、軟弱な地盤が浅い範囲にある場合に有効と言えます。
掘削置換工法
掘削置換工法とは、計画地の軟弱な層を、重機等を用いて取り除き、新たに置換材(良質材)で置き換える工法です。
置換材料には主に砂や砕石が用いられます。残土の量によってはセメント系の固化材を攪拌混合するといった事もあります。
最終的に置き換えた層をしっかりと締固めて完了です。
デメリット
適用範囲でも挙げたように計画地が広大であったり、置換予定の層が深かったりすると他の工法よりも費用や期間が多くかかるだけでなく、改良した土地の質も均一にすることが難しいといったデメリットがあります。また工法によっては周辺環境への影響等も考慮しなければいけません。そのため、計画地周辺の状態や、土質調査での軟弱層の範囲を正確に把握して施工する必要があります。
固結工法
「固結」とは土の粒子が強固な力で永続的に結合し、物体となる事を言います。この固結工法では軟弱な層に生石灰やセメント、水ガラスといった固化材を混ぜる事で化学的固結作用を起こし、地盤の固結をさせることで支持力の強化や、液状化防止を目的としています。
適用範囲
工法によって適した施工深度は異なりますが、浅層混合処理工法で2m位まで、深層混合処理工法で30m位まで(各施工会社の持つ技術や重機によって深さは変わります)様々な深さに対応する事が出来ます。
浅層混合処理工法
固化材を攪拌混合する事で改良体を施工する工法で、一般的な戸建てやアパートの改良体として用いられる事が多いです。
深層混合処理工法
柱状改良工法とも呼ばれています。
スラリー状または粉体状のセメント系固化材と現地の土を攪拌混合し、強固な改良体を形成する工法です。
石灰パイル工法
地中に生石灰が主成分となる改良材をパイル状(杭状)に圧入する工法です。
生石灰が地中の水分と反応して消石灰(地中との水を吸収して膨張した状態)となるため、地盤の支持力向上や沈下抵抗、滑り破壊に対しての防止策となります。
薬液注入工法
セメント系や水ガラス系などの注入材を地盤に圧入することで地盤を改良する工法です。
他の地盤改良工法と比べると、施工設備がコンパクトで狭小地での施工が可能です。
メリット・デメリット
地盤の土質や、深度によって様々な工法を選べると言った利点があります。狭小地でも施工可能で、費用もそれなりに抑えられると言ったメリットもある一方で、改良体の強度に限界もあり、高い接地圧の構造物には対応できません。
また、土地の売買時には地中に改良体が残ってしまっているため撤去・廃棄に費用が多くかかってしまう事もデメリットの一つと言えるでしょう。
比較
ここまでで置換工法と固結工法の大まかな概要を説明させて頂きました。次は互いの相違点を多角的に見ていきたいと思います。
費用
まず初めに施工費用についてです。同条件の計画地があった場合に、純粋な施工費のみを考えた場合は固結工法に軍配があがる事が多いでしょう。
置換工法では軟弱な地盤を全て何かに置き換えると必要があり、固結工法よりも多くの良質材と残土処分費がかかる可能性が高いです。
施工
施工については会社ごとの得意・不得意な分野や、周囲の環境等で大きく変わってくるため一概にどちらが優れているといった判断は難しいでしょう。強いて言うのであれば、改良体の質という面で、固結工法は施工者の技術や経験が必要となる場合があります。一方で置換工法にはそういった高い技術が不要な面があります。勿論安全面や段取りといったポイントでの経験や知識はどちらも重々に必要です。
施工期間については重機・設備・固化材の準備や、改良体の固化にかかる時間等を考えると置換工法よりも時間がかかる可能性が高いです。しかし一度改良体が出来てしまえば、地盤の強度で言えば固結工法の方が平均して高く強固と言えるでしょう。
計画地の売買
二つの工法で最も大きな違いが出るのが、土地の売買になった時になります。地中に改良体が残る固結工法には、撤去や廃棄に多額の費用がかかる可能性がある一方で、置換工法にはその手間がありません。また、新たに建物をその場所に立てる際に必要な改良費用にも差が出てきます。
将来的に家や土地を手放す可能性がある場合は、施工時に多少費用がかかっても地中に改良体の残らない、あるいは撤去しやすい工法を選んだ方が良いのは明確です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。地盤改良方法の中には状況に応じていくつもの工法があり、今回は置換工法と固結工法について解説させて頂きました。
軟弱地盤をそっくりそのまま入れ替える「置換工法」と、軟弱地盤そのものを強化する「固結工法」、かなり施工内容に違いがありますが、計画建物のために計画地の安全性を高めるという点ではどちらも必要不可欠な手法の一つです。
他にもいくつもの工法や、会社毎に改良を加えた独自の手法がありますので、興味を持った方は是非調べてみてはいかがでしょうか。