地耐力ってなに?3つの調査方法と地盤改良工法を紹介!

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地盤調査を行う際によく目にする「地耐力」という難しい言葉があります。「地耐力」は、長期にわたる生活や不動産の所有などのため、安全な建物の維持にとって根幹にかかわるものです。
建物を建設する上で重要な意味を持っており、そこで今回の記事は、地耐力の意味、地耐力を確認する調査方法、地盤改良方法について解説していきます。

地耐力とは?

地耐力とは、地盤が建物の重みにどれだけ耐えられるか(地盤の強さ)を示すものです。この地耐力の大小によって、建物を直下で支える基礎部の構造形式が決定されることになります。
地耐力が建物の単位面積当たりの重量より小さい場合、建物は自重によって地面に沈み込んでしまいます。
そして、建物全体が均一に沈下する場合は圧密沈下といい、地盤の強さにばらつきがあって不規則に建物が沈下した場合は不同沈下といいます。

地耐力の目安として地盤の種類による地盤の許容応力度が建築基準法施行令で規定されており、下表に示すとおりです。

地 盤

長期に生ずる力に対する 許容応力度 (単位 kN/m²)

短期に生ずる力に対する 許容応力度 (単位 kN/m²)

岩盤

1000

長期に生ずる力に対する許容応力度の それぞれの数値の2倍とする。

固結した砂

500

土丹盤

300

密実な礫層

300

密実な砂質地盤

200

砂質地盤(液状化しない)

50

堅い粘土質地盤

100

粘土質地盤

20

堅いローム層

100

ローム層

50

例えば、岩盤の地耐力(長期)は1000kN/㎡で、1平方メートルあたり100t(トン)を支えられることを示しています。
地耐力は、地盤調査によって確認することができます。
地盤調査の方法の中で、一般的な地盤調査を解説していきます。

地耐力を確認する主な調査方法

建物を建てる際に、地盤調査の実施は建築基準法によって義務付けられています。地盤調査では、地盤の軟弱さや、建物の荷重に対して沈下しない地盤であることを調査する必要があります。
地耐力の調査方法にはボーリング試験(標準貫入試験)、平板載荷試験、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)の3つがあります。
各試験にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、調査内容を含めて詳しくみていきましょう。

ボーリング試験(標準貫入試験)

一般にボーリング調査と称される地盤調査は、正式にはボーリング・標準貫入試験といい、ボーリングによって掘削した孔を使用して、1mごとに地盤の硬さを測定する標準貫入試験を行なう調査です。通常は、土のサンプリングと同時に実施して、地盤の強度と地層の状況(ローム、粘土層、砂礫層など)を把握します。

標準貫入試験とは、63.5kgのハンマー(おもり)を高さ75cmから初速度ゼロで自由落下させて、サンプラー(試料採取器)を土中に30cm貫入させるのに必要な打撃回数を測定する試験で、この時の打撃回数をN値と称して、地盤の耐性を推測する目安になります。

標準貫入試験の基準では、最大打撃回数は50回です。標準貫入試験用サンプラーが30cmの深さに貫入するまでに50回打撃した場合は、N値50以上として記録されます。
標準貫入試験が必要であるのは、3階建てや鉄骨造などの物件の確認申請の際に「構造計算書」を添付する義務のある場合や、中・大規模建築物の建設の場合です。

スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)との大きな違いは、かなりの、深い層や硬い層でも調査できることです。

標準貫入試験のメリット

標準貫入試験は、住宅や倉庫などの中規模建築物や2階・3階建てのアパート、中層のマンションなど多様な用途で採用されています。地中深い地盤まで調査でき、サンプリング(土壌採集)できることで液状化の判定が可能であり、高い精度の調査ができます。

標準貫入試験のデメリット

標準貫入試験は、大掛かりな装置のボーリング杭を使うため狭い敷地では調査ができません。また、調査が大掛かりになるため調査に要する費用と時間がかかります。垂直方向に荷重をかけて、狭い範囲の地盤を対象に実施する調査のため、横方向の地盤の状態を把握するのが難しくなります。

平板載荷試験

地耐力の調査方法には、地盤の沈下量を実際に測定できる「平板載荷試験」があります。建物の基礎を設置する位置(深さ)まで掘削を行い、その基礎部に小さな載荷板(直径30cmの円盤)を置きます。
実際の建物の重量に見合う荷重を8段階に分けて加え、5分ごとにその加重を徐々に大きくしていき、そして力が最大(極限支持力)になった後は、逆に5分ごとに加重を緩めていきます。
これにより、地盤の沈下量を測定して沈下がどれだけ復元されていくのかを調べて、地盤が安定した支持力を持つのか判定する試験です。

極限支持力とは、激しい揺れや振動と強い圧力が加わった際に地盤が崩壊せずに耐えられる「最大せん断応力」のことです。沈下量とは、建物にかかる接地圧(接地面に作用する単位面積当たりの荷重)によって沈む限界値のことです。

平板載荷試験のメリット

地盤に構造物を想定した荷重を直接かけられるので、信頼性が高いという点です。
また、荷重をかける方式なので騒音や振動がありません。他の地盤調査のように大きな設備を必要としないため調査時間が短くなり、ボーリング試験よりも安い費用で調査できます。

平板載荷試験のデメリット

平板載荷試験は、基礎部分に直径30㎝の載荷板を設置して荷重をかけて実施するために、深い地盤の調査が難しく、また調査箇所が多くなってしまいます。
調査個所よりさらに深い地盤の調査が不十分となり、そのため支持力の評価が面倒なのです。たとえ平板載荷試験で良い結果が出たとしても、地盤沈下を起こすリスクがあります。

スクリューウエイト式貫入試験(SWS試験)

ロッド先端にスクリューポイントを取り付けて、それに1枚ずつ重り(5kg・15kg・25kg・50kg・75kg・100kg)を乗せ、荷重に対する貫入量を測定しその荷重の貫入量とします。載荷荷重100kgで貫入が停止した場合には、ハンドルを回してロッドを地面に貫入させていきます。

スクリューポイントが、硬い層に達した際や、貫入量25cm当たりの半回転数(180度)が50回以上の場合、空転する場合、貫入深度が10mに達した際に測定を終了します。この装置が既定の深さに貫入するまでのハンドルの回転数で、地盤の強度を調査していきます。

狭い敷地内でも調査可能で、半日程度の短期間で調査が終わり、調査費用も安いことから、一般住宅の地盤調査によく利用されています。

建築物にはどのくらいのN値が必要?

上記にあげた3つの地盤調査を実施することで、地耐力やN値を確認することができます。
しかし、下記に示すように、地盤を形成する土の種類によってN値が示す地盤の強度に相違があるので注意が必要です。

「粘性土」の場合のN値(目安として)

0~ 4 : 地盤改良精密な土質調査が必要なやわらかい地盤
5~14 : 安定はしているが地盤沈下の可能性がある
15以上 : 地盤沈下の心配をする必要のない硬い地盤

「砂質土」の場合のN値(目安として)

0~10 :地震のときに液状化を起こす可能性があるやわらかい地盤
10~30 :オフィスビルなどの中層構造物の基礎地盤になるが、十分な強度とは一概に
いえない 硬めの地盤
31以上 :大型の建造物の建設に適した非常に硬い地盤

ちなみに、N値が30〜50であれば、中規模の建造物の建造にも耐えられる地盤の目安になり、50以上であれば、大型建造物の荷重にも耐えられる非常に強固な地盤です。

また、軟弱地盤の場合は、地盤改良が必須です。

そして、スクリューウエイト式貫入試験(SWS試験)の場合は、ボーリング調査とは試験方法が異なるためN値を直接測定していません。
しかし、その測定結果からN値を推定する式が提案されています。

長期許容応力度とは?

建物が地盤の上に建っている限り、その地盤は常に建物の重量を受け続けています。この際に地盤内部には、外圧が加わると物体内部に生ずる応力という抵抗力が発生しています。この抵抗力に大きく関わっているのが長期許容応力度です。

長期許容応力度

部材が壊れない強度のことを「許容応力度」と称します。「長期許容応力度」を地盤の支持力と表現することができます。そして、長期にわたって地盤に負荷をかけ続けている建築物などの重みの大きさが支持力です。「長期許容応力度」とは、建物の重みに対する長期的な地盤の支持力のことです。

地耐力が低い時の地盤改良工法

地盤調査により地耐力が低い弱い地盤だと判断された場合、建設前に地盤を強化するための地盤改良が必要になります。
地盤改良工法にはさまざまな種類がありますが、主なものは、「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管工法」などの地盤改良工法です。
これら代表的な3つの工法はどのような方法で地盤改良するのか、また、各改良工法にはどんなメリット・デメリットがあるのかなどを紹介していきます。

表層改良工法

表層改良とは、軟弱地盤の層が地表から2m以内の場合に適用される地盤改良で、地盤全体が軟弱の場合はできない工法です。
良好地盤と軟弱地盤の間にセメント系固化材を軟弱地盤に散布して、地盤の土と混ぜ合わせて固結体を造り地盤の強度を上げるものです。
比較的安価に短期で工事が終わるという利点があります。

表層改良工法のメリット
表層改良工法は、軟弱地盤の表面を締め固める簡単な作業のため、作業が簡単で工期が短いので安価な費用で工事ができます。また、施工は小型の重機で施工が可能なので小さな敷地でも工事が可能です。

表層改良工法のデメリット
表層改良工法は地盤が傾斜していると施工が面倒になり、改良スキルによっては、建物の傾きや基礎へのダメージを受けたりします。ドアが閉まり悪くなったり、壁にひびができたりといった不同沈下が起きるリスクもあります。

柱状改良工法

柱状改良工法とは、軟弱地盤が2m以上8m未満の深さの場合に推奨される地盤改良です。良好地盤と軟弱地盤の間にあらかじめ掘っておいた穴に、セメント系固化材と現地の土を混ぜたものを流し込みます。柱状の改良体の先端支持力と周面摩擦力で建物荷重による沈下を防ぐ工法で、工事できる地盤が多いのが特徴になります。

柱状改良工法のメリット
柱状改良工法は、振動が少なく騒音もないので周囲に迷惑をかけません。また、工程が少ないため工期が短くなり、さらに杭で支える工法のため強度などの信頼性が高くなります。
基礎地盤の支持力が向上することで沈下対策としても効果的です。そのため、長期にわたり地盤の強度を維持することが可能です。

柱状改良工法のデメリット
柱状改良工法は、軟弱地盤と良好地盤の間で地盤を強化する方法なので良好地盤が少ないと施工が難しくなります。改良体を築造するために施工機・プラントが必要になるので工事費用が高くなります。

小口径鋼管工法

小口径鋼管工法は、軟弱層が8メートル以上の場所で有効な工法で、鋼管を支持層まで回転圧入して建物を支えます。地下水の影響を受けにくく、地盤が傾斜している場合にも施工ができる工法です。
表層改良工法や柱状改良工法では対応しきれない支持層が深い場合や、他の混合処理工法では強度を出しにくい土質の場合などに、この工法が採用されています。

小口径鋼管工法のメリット
この工法は比較的小型の機械で施工ができるため、一般住宅の地盤改良工事にも良く実施されています。また、セメント系固化材を使わないため、固化不良を心配する必要がなく建物を支持することができます。
さらに、地下水の影響をほぼ受けないので、支持層が傾斜していても施工は可能です。
施工日数も1〜2日程度で工期が短いのも利点といえます。

小口径鋼管工法のデメリット
小口径鋼管杭工法は、支持層がない地盤では施工できません。また、新しい盛土造成地などの圧密沈下の大きい場所で杭を打設すると、建物自体は沈下しませんが周囲の地盤が下がる可能性があり、杭の抜け上がりが起こるリスクが生じます。
また、同じ条件下の工事では、柱状改良工法よりも工事費が高くなることが多く、地盤に鋼管の杭を打ち込むため騒音や振動が発生する場合があります。

まとめ

地盤の地耐力の確保は、建物を安全に建てるために大事なことです。技術の進歩によって、地盤の特徴を地耐力や長期許容応力度で情報を得られるようになりました。これによって事前に地盤の弱さを把握できます。
そのため土地が軟弱地盤であっても、適切な地盤改良を実施すれば地盤の強化が可能です。