地盤改良工事のメリットと改良費用の相場を知る

ソリッドキューブ工法協会コラム工法地盤改良工事のメリットと改良費用の相場を知る

地盤改良工事のメリットと改良費用の相場を知る

地盤改良とは、建設物の土台となる地盤を固く補強するための工事です。
まずは、地盤調査を必ず行って、地盤改良が必要か否か確認する必要があります。
次に地盤調査結果に基づいて、現地の状況に相応しい地盤改良工法を決めて、費用を含めて安全で安心な家づくりを実現しましょう。

地盤改良とは?

地盤改良工事は、敷地の地盤改良を実施して、建物の建設後に傾いたり沈下したりすることを防ぐ工事を言います。
地盤が弱いと、時間が経過するに伴い、建物の重量を支えることができず地盤沈下が起こり、建物が倒壊する危険性も増加してきます。

敷地の地表面は、見た目は何も問題がないように見えますが、過去に沼地だったり、川が流れたりする履歴のある土地は、地中が軟弱地盤(建物が沈下や傾きを起こすような弱い地盤)になっている可能性があります。
また、高低差のある地形では土地を平坦に造成する際、擁壁を作って部分的に盛土を行います。
盛土部分は、締固めを行いますが、地山(元の地盤)との性質の違いから不同沈下を生じるリスクが高い宅地となります

そのような事態が発生しないように、地盤改良工事を実施する必要があります。

地盤改良の前に地盤調査の実施を

どんなに耐震性能の高く構造上問題のない家を建てても、それを支える地盤が弱ければ、不同沈下を生じ、沈下形状によっては僅かな変形ですが建物に ダメージを与えることがあります。
そのため家を建てる前に地盤の調査を実施し、状況に応じて地盤改良を行うことが必要です。

地盤改良が必要かどうか、どんな改良が望ましいかを判断するためには、地盤調査が不可欠です。
地盤調査は、2007年に住宅瑕疵担保履行法(じゅうたくかしたんぽりこうほう)が施行されてからは、瑕疵担保保険の申し込みの際に必要になったため、基本的に家を建てる前に地盤調査が義務付けられました。

スクリューウエイト式貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)

地盤調査には、「スクリューウエイト式貫入試験」と「ボーリング調査」の2種類の方法があります。
「スクリューウエイト式貫入試験」は、住宅の設計図に基づいて、建物の中央部と四隅の合計5カ所の地盤の強度(地盤の支持力)を調査する方法です。
戸建住宅など小規模構造物の支持力特性を把握する方法として多く採用されています。
具体的には、鉄の棒を地面に立てて、スクリューを先端に取り付けたロッドに規定された荷重を順に載せ、最大1kN(100㎏)まで加えた状態で回転させながら貫入する試験です。

これにより、地盤の硬軟や締まり具合または土層の構成を調査できますが、土を採取しないため土質判定は推定となります。

25cm貫入する重さを段階的に計測します。
100kgを載せても貫入しない場合には、棒に装備されているハンドルを回転させ、25cm貫入するのに必要な回転数を記録して、得られた重りの重量や回転数から地盤の強度(N値)を推定することができます。
N値は数字が大きいほど強度があることを示しています。

ボーリング調査

また、重量が重い中層建築物の場合には、もう少し詳しく地盤を調査できる「ボーリング調査」を行います。
これは地質により地盤の強度を調べる方法で、支持層(強固な地層)に達するまでボーリングしながらN値を計測します。

そN値の計測と同時に土をサンプリングできるため、どの深さにどのような土の層が存在しているのかが分かります。
軟弱地盤の判断に有効な地下水位の測定ができます。

地盤改良の3つの工法

地盤調査の結果、地盤改良が必要になった場合には、実際にどんな方法で地盤の強度を高めているのでしょうか?
一般的には①表層改良工法、②柱状改良工法、③小口径鋼管工法の3種類があります。

表層改良工法

「表層改良工法」は、軟弱だと想定される地盤が地表から2m以下の浅い位置にある際に使用される工法です。構造物建設部分の表層にある軟弱地盤部分を掘削してから、セメント系固化材を使って、原地盤の土と混合・攪拌した後に転圧して、十分に締固めます。

これにより、支持力を増加して均等化をすることにより、不同沈下を防止する強固な地盤に改良する工法です。
表層改良工法は、施工が容易・効率的で、施工量が少なく工期が短く、経済的です。
工事日数は施工面積により変わりますが、通常の戸建て住宅の場合1日~2日で完了します。

柱状改良工法

深さ2m以上の地盤を改良する場合などに用いられる工法です。建物の基礎形式に併せて柱状に固められた改良体を設置していきます。

木造住宅から鉄筋コンクリートのマンション等の重量建築物まで適用可能な工法です。セメント系固化材の混入割合を変化させることで 出来上がる改良体の強度を調整することができます。もちろん対象の土質によって強度は変わってきます。

柱状改良工法は支持層強度と改良体の周面に作用する摩擦力で建物を支えます。 軽量な木造住宅などでは、強固な支持層まで改良体を築造しなくても支えることができます。

小口径鋼管工法

「小口径鋼管工法」は堅固な支持層まで、小口径の鋼管を杭状に貫入させることにより、建設物を支持します。
この工法は、軟弱な地盤が厚く、支持層が深いため、表層改良工法や柱状改良工法では建物を支えられない場合に採用される工法です。
また、腐植土などセメント系固化材では固化に不安がある土質が堆積している地盤などでも多く採用されています。

地盤改良のメリットと留意点

表層改良工法

「表層改良工法」のメリットは、改良厚さは2m程度までと制限がありますが、施工の汎用性の高さにあり、小型バックホウで施工が可能なためを搬入路が狭い場所、狭小敷地や高低差がある敷地でも工夫を加えることで施工ができます。

「表層改良工法」では、搬入路が狭い場所や狭い土地でも、地盤改良機ではなく小型のバックホーを使用することができます。また、高低差がある傾斜地でも施工することが可能です。
適用可能な土質は、粘性土、砂質土が基本的ですが、腐植土などの固化し難い土質が分布するような場合は、これを除去して施工を進めることで対応が可能です。
また、火山灰質粘性土層などの六価クロムを溶出しやすい土質に対しては、六価クロム低減型セメント系固化材を使用して対応します。

「表層改良工法」の施工は、軟弱地盤の厚さが0.5m~2.0mまでの地盤改良に適応できます。改良する軟弱地盤の厚さが2.0m程度である場合は、次に説明する柱状改良工法の方が経済的である場合があり、どちらの工法を選択するか検討する必要があります。
この工法の適用外地盤は、地下水位が地盤改良層内にある地盤、改良層の下に不安定の地下水の流れがある地盤や下部に空洞がある地盤です。

柱状改良工法

「柱状改良工法」は効率的な工法であり、工事費用を抑えられるというメリットがあるため、多くの業者で取扱われて採用されています。
この工法は、建物の規模や基礎形式に応じて改良体の間隔、本数、太さ、長さを調整できます。
改良する土質に応じてセメント系固化材の種類や添加率を変更できます。

なお、腐植土などの固化し難い地盤に対しては、専用の材料が用意されていますが、コストを含めて慎重に検討する必要があります。

小口径鋼管工法

「小口径鋼管工法」は、鋼管先端部を支持層まで到達させるため支持力が高くなります。鋼管の先端に鋼管の外径の3.0倍~3.5倍程度の外径を有する先端翼が取付けられている工法では、更に高い支持力を得られます。
また、施工後の養生期間を表層改良工法や柱状改良工法のように必要としないことと固化材液が混ざった産業廃棄物の発生がありません。

「小口径鋼管工法」は、支持層がなければ十分な支持力が得られません。
また、同じ条件で工事した場合に、柱状改良工法より費用が高くなる場合があります。

地盤改良のコストの比較

一般的な戸建て住宅の延床面積は30坪程度なので、坪単価は30坪程度の建物を前提に表示しており、2022年8月5日時点の情報に基づいています。

地盤調査の費用は
「スクリューウエイト式貫入試験」で、5~10万円程度、調査期間は半日程度となっています。
「ボーリング調査」の費用は15~30万円、調査期間は1日~数日です。

地盤改良工法の費用は、
「表層改良工法」で30~90万円で、坪単価1~3万円くらいです。
「柱状改良工法」では、費用の目安は約100~150万円、坪単価4~5万円。
「小口径鋼管工法」は120~200万円の費用で、坪単価5~7万円です。

まとめ

地盤改良工法は、最終的な建設物の設計が決まらないと施工はできません。
大切なのは、地盤改良の工法やメリット、基本的な知識を理解したうえで、計画建物、地盤条件と敷地条件を考慮して最適な工法を選定することです。
納得できる費用で安全な住宅を建てるためには、地盤調査は必ず実施して、複数の工法・専門業者に見積もりを依頼しましょう。